部下のマネジメントにコーチングは使えませんよ…という事実

フリーランスであれこれやっているが、メインの仕事は何なのか?と言うことになれば、私の職業は「コーチ」であって、名刺の肩書も「コーチ」と書いてある。

初対面の方に名刺をお渡しして必ず聞かれるのが、

「コーチングで部下の育成やマネジメントって本当にできますか?」という質問。

私の答えは「できないです」という結論。

会社にコーチングを研修を導入したはいいが、全然成果が上がらなかったし、研修を受講した管理職からもこんなの使えない!現実的じゃない!という話が結構広まった時期があって、「コーチング」という言葉自体が人事や社内研修担当者からかなり嫌われた時期もあった。
まぁ、そうだろうね…と思う。

「コーチング」という言葉を使っている人には、「コーチングって部下の話をよく聞いて、部下をとにかく褒めればいいやつか…そうすればモチベーションが上がって、成果が出るってわけだな…」と思っている人もかなり多い。

私も自分で部下にコーチングをやってみたことがもちろんある。
しみじみ思うのだがこりゃ無理だ…と自分の経験からも思う。

コーチングというのは、「利害関係者間でやるとうまくいかない…」というのが原則だと私は思っている。
だって、絶対コーチ側が自分の利益に誘導しちゃうから。
誘導した時点でコーチングというのは、もはやコーチングではなくなってしまう。そこに自発性はない。

本人の自発性を引き出すものがコーチングであって、うまく引き出した結果、考えを深めて自分で納得する行動を取り、さらにその結果を定期的にチェックし、次に取るべきアクションが見えてきて、それが行動になり、さらにその行動をチェックし…としているうちに、自分への信頼感が上がり、上向きの螺旋階段を昇るのである。

私の実例を挙げてみよう。
営業のマネージャーだった私は、締めの時期が1ヶ月後に近づいてきて売上目標に対して数値が足りていない。
そんな時に、部下に対して「今、一番必要なアクションはどんなことですか?今週は何をしますか」と訪ねたところで、部下から「製品についてのクレームがいくつかあるのでそれを製品チームと共有します」と言われた。「馬鹿野郎!そんなのこの時期やることか!」と心のなかで毒づいた。

いやいや私はコーチングを学んだ身だ。そんな恥ずかしいことはできない…と思ったので、穏やかに速やかに話を切り替えた。
「なるほど、それは素晴らしい。でも1ヶ月後は売上の締め日よね。で、今の実績値はかなり低いよね。仕掛り案件を今期中にクローズに持って行くにはどうすれば良いかしら?」
一応、同意形式の口調になっているし、アクションを決めるのは部下であるあなたよ…的な流れだが、これはもう全然コーチングではない。そこにあったのは、コーチング口調の指示命令である。

ちなみに私はCoach21(現 株式会社 コーチ・エィ)およびCTI Japanというコーチ育成養成機関として、今も昔も日本のトップクラスの機関でみっちりと長時間のトレーニングを受けていて、現実に何年もプロとしてコーチングを行っているコーチで、でもこんなもんである。
ましてや会社の管理職でコーチング研修受けただけの管理職の方がコーチングで部下をマネジメントしようなんて、生兵法は大怪我のもと…という言葉をよく考えるべきだろう。

上司が達成したいことと部下が達成したいことと、時期も設定内容も全く噛み合わない。こんなときコーチングというのは、もう無力である。会社には達成しなくちゃいけない目標があり、その期限がある。それぞれがそれぞれの役割を達成しなくては、会社は運営できない。

根本的に会社というのは、やりたいことをやる場所ではない。やるべきことをやる場所なのだ。

部下のやりたいこととチームのやるべきことが一致していればコーチングは機能するけれど、なかなかそんな偶然には巡り合えることはないだろう。

部下のマネジメントについて改善したいことがあるのであれば、まずはあなた自身がコーチングを受けてみて自分の中にある「部下のマネジメント」という言葉にはそもそも何がふくまれているか?そして何を達成したいのか?というのを明確にしてみたほうが良いと思う。
そこがはっきりすれば、手法として何を使うべきか、何を学ぶべきかというのが見えてくるはずだ。
コーチングというのはそうやって使うものなのだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

  1. NO IMAGE
  2. NO IMAGE

    2008.11.02

    talk through
  3. NO IMAGE
  4. NO IMAGE
  5. NO IMAGE
  6. NO IMAGE

コメント

コメントをお待ちしております

HTMLタグはご利用いただけません。