2023年:読んだ本 ベスト5

2023年の読書概況

このブログを書いている2023年12月30日時点で、2023年に初めて読んで読了した本は191冊。最初から最後まで再読した本が35冊となっています。
どちらも雑誌・マンガを含みます。(再読のマンガは全巻再読ぐらいじゃないと、きりがないので含めていません)

昨年2022年は、以下の記事を読むと再読含まずに284冊を読了したとなっているので、大幅に読了数が減ったように見えますが、これはマンガの読了数の数え方を変更したのが大きいと思います。
以前は、ハマって一気読みしてまうと、それぞれの巻数を1巻ずつカウントしていました。

例えば、2022年に読んだ「緋の稜線 合本版1〜12巻」だと12冊カウント。一方、2023年の今年は、「サプリ 1〜10巻+Extra」の一気読みは全部で11冊読んでいますが、1冊でカウントしています。
体感では、読んでいる冊数としてはあまり変わらない印象です。

2022年:読んだ本 ベスト5

尚、昨年カウントした「電子書籍vs 紙の書籍」は、今年はきちんと記録していませんが、後半からやっぱり紙じゃないと頭に入りにくいとつくづく感じることが多く、ストーリー性のあるマンガと小説以外は、紙で読むようにしています。

2023年ベスト5

今年はどうも順位がつけにくく、印象に残った5冊を読了した順で取り上げます。

「具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ」細谷 功(著) dZERO

2023年2月のオンラインのセミナーでたまたま著者の細谷氏の「具体と抽象」の話を聞いて、ああ、そういうことだったのか‥と腹落ちするものがあり、慌てて購入した一冊です。

顧問先の会議に出ていると、意見が衝突する会議というのは、たいていと片方が具体的な話をしていて、もう片方が抽象的な話をしているのだな・・と腹落ちしました。
どっちの話も間違っているわけではないのですが、双方違う場所から意見を出し合っていて通じ合っていないし、そこから生産的な結論を生み出せない。

具体的な方は、範囲は狭いがやるべきことが明確になりやすい。
一見良さそうだけれど、すぐにタスクを片付けたいチームに多く見られる現象で、そもそもそのプロジェクトなんで始めたんだっけ?とか、やる意味ある?みたいな話が多く見られます。
よくあるのは、競合が新サービスを始めた、当社もすぐやらなくては…みたいなタイプのもの。
こういう会議では基本的に、後追いみたいなサービスを出すので、イノベーションは起こりませんし、そもそも視野が狭いので、競合が出したサービスそのものが本当に市場にニーズがあるか?などを検討していないことも多く、たまたた市場が伸びれば、一緒に伸びますが、そもそも市場ニーズがなく、競合含めサービス提供そのものが無駄だった‥というのもよく見かけます。

抽象的な方は、考えるべき範囲が広いがやるべきことが曖昧になりやすい。
こちらは永遠に机上の空論みたいなことが起こりやすいですし、チームによってはそもそも具体的行動を起こすのが非常に苦手なために、ずっと抽象的な話をしているというのもよくあります。
とはいえ、市場に新たに参入するときや新サービスを出すときには、広くものを見ておかないと上述したようにそもそも決めたアクションが無意味でした‥ということも起こります。

マーケットを見るときは、範囲を広く見てそこからだんだん狭くして、解像度を上げるというのが大切だということです。
そして、「具体」と「抽象」の往復運動をしながら、「やること」、「やらないこと」をメンバーで決めていくことで、メンバーの共通認識を持ち、個々に作業を進めていくわけです。

この本を読んで、「具体」と「抽象」の話を頭に起きながら、会議に参加していますが、マネジメントの資質というのは、どれだけ「上位目的」にこだわれるかだなぁ…と思うことしばしです。
部長クラスはまだしも、役員クラスで管掌範囲の成果にこだわり過ぎなのは…、さすがにねぇ。

そういう会社は、社外取締役とか顧問とか、社内に部下を持たない立場で且つあまりその分野に専門的過ぎない人を入れるとわりと社内政治に拘泥せずにうまくいくケースをよく見かけます。

「具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ」細谷 功(著) dZERO

「かしましめし」おかざき真里(著)祥伝社

まだ連載途中のマンガで現在6巻まで刊行中。
美味しいものが出てきて、レシピも出てきて且つ美味しそうに食べる登場人物が出てくるフィクションがそもそも好きなのですが、そこに登場人物の大半が美大卒業生‥というのが、現在美大で学ぶ私には、あー、こういう美大生いそう…と思えるところがまたツボです。

外から見て決してうまくいっていない人たちではないけれど、自分たちとしてはやっぱり疲れちゃうところも多くて、…というのは、もしかすると大半の人がそうなのかも。
そんなときに、いつでも誘えて、一緒に美味しいものを作って食べる仲間がいるってある種のユートピアっぽい感じかも。

また、仲間の結束がすごく堅いって感じじゃないところも好み。

ドラマかもされているそうで、特設サイトもあり、試し読みもできるようです。

「かしましめし」おかざき真里(著)祥伝社

「ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常」エドガー・カバナス/エヴァ・イルーズ(著) みすず書房

ここ数年、特に海外ではあちこちでポジティブ心理学的なものが叩かれているようで、自己啓発やポジティブ心理学や、それらを活用したコーチングや、人をHappyにするSelf Helpをサポートすることをビジネス化することでどんんことが起こっているかについて、考えさせられる本です。

長年コーチングをやってきた身としては、コーチングの全部がクライアントを褒めまくったり、どんどん高い目標を設定しまくったりするものじゃないんですよ‥と反論したい部分も無きにしもあらずですが、そこは枝葉末節な話であって、一番の問題は自己責任社会の片棒を担いでしまっていることなんです。
この部分に関しては、どんなコーチングであれば、その要素は含まれていることは認めざるえません。

自分たちの感情を測るためのアプリがスマホに搭載され、ポジティブ心理学の研究には海外では膨大な予算が投入され、セルフヘルプ市場は巨大なマーケットとなりました。

今日、幸せはもはや副次的な目標でも、空虚な約束や一時のよろこびで人を釣って何かを買わせるためのキャッチフレーズでもない。それどころか、幸せそれ自体がその商品となり、もっと多くの幸せを個人に約束する市場の経済的主電源になっている
「ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常」P125

SNSの発展もあり、もっともっと幸せにならないと…という風潮(プレッシャー)が高まり、さらにマーケットは拡大しそうにも感じます。

一方で自分を幸せにするのは、自分の仕事…となると、国とか政府とか福祉とかの役割は?という話になってしまいます。
この年末も話題になりましたが、日本の政治家が誇らしげに「子ども食堂」が増えたなんて云うのは、おかしな話で、政治家は子どもの貧困をそもそもなんとかしなくちゃいけないのでは?子ども食堂をいらない社会を作るのが仕事だよね?という

読みやすい本では決してありませんが、色々と考えさせられることの多い本でした。

「ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常」

「オリーヴ・キタリッジ、ふたたび」エリザベス ストラウト (著)早川書房

図書館をウロウロしていて見つけたオリーヴ・キタリッジの続編。

近所に大きな本屋さんがなく、通勤もないのでリアル書店に行くことは本当に減り、ネットでウォッチしている書評系サイトもどちらかというとノンフィクションが中心で、フィクションそれも海外のものについてはよっぽどヒットした作品以外はなかなか耳に届かず、目にも入らない今日このごろです。

前作の「オリーヴ・キタリッジの生活」同様に、形としては連作短編集なのだけれど、主人公のオリーヴが少ししか出てこないものもあれば、彼女がメインのものも。

久しぶりに会ったオリーヴは、相変わらずのキャラでリアルだったらお付き合いしたいかどうかかなり悩むオリーヴのままで嬉しくもあり、一方で彼女も歳をとったのねとしんみりさせられました。

登場人物の誰もが平凡でごく普通の暮らしを描いたアメリカの町の話なんだけれど、小説にしか出せない味わいというものがここにはあって、何度も読み返してしまうタイプの物語です。

何度も読み返したいと思う小説にもっと会いたくて、来年はもっと翻訳小説を読みたいと思っています。
馴染みのない環境と生活習慣を持つ登場人物たちの日常を読むのは、硬い食べ物を噛み砕くような苦労があるけれど、その苦労の果てに美味しさを感じられるとそれは忘れがたい印象を残してくれるところが好きです。

今年は翻訳小説としては、アン・タイラーにもハマりました。
若い頃はどこが面白いのかさっぱりわからず悔しい思いをしましたが、今では物語が染み込んでくるようになったのは登場人物たちの年齢を超えたのと、普通の町の普通の人々の話をじっくり味わって読めるほどの時間ができたからかもしれません。

「オリーヴ・キタリッジ、ふたたび」エリザベス ストラウト (著)早川書房

「静寂の技法: 最良の人生を導く「静けさ」の力  ジャスティン・ゾルン/ リー・マルツ (著)

私は騒がしいものが随分と苦手なのだということに逗子に移ってから気づきました。
性格のあちこちが雑でよく喋るタイプなので、自分は騒がしいタイプだと認識していますが、だからといって、騒がしいのが好きなわけではないようです。

この本では、「聴覚騒音」「情報騒音」「内部騒音」という3つの騒音を静め、どうやって静寂と波長を合わせるかというのが書かれています。

都内では当たり前だった「聴覚騒音」が少ない町に暮らすと、都内に行くとこんなにうるさかったのか・・と気がつきます。自動車や人の多さによる騒音だけでなく、あちこちで流れるお節介なアナウンスやBGM。これらはその場所を離れれば良いだけなので、さほど静めるのは難しくありません。

「情報騒音」というとネットのニュースやSNSがすぐにあげられますが、このあたりはデジタル・デトックスなどと言葉があるように電子ガジェットから離れればそうややこしくはないのですが、ややこしいのは、自分があれもこれも知っておかなくては‥と思い、自分から必要だと思いこんで情報を取り込んでいくことのような気がします。
どの仕事でもある程度情報が必要ですが、あまりに多いと相手の話を聞くよりも自分の知識を見せたくなったり、効率的な情報収集を心がけることに集中してしまい、何事にも心ここにあらずのような状態になりがちです。

そして一番ややこしいのは、「内部騒音」自分の中から生まれてくる声です。
この本では、33通りの静寂の見つけ方を最後にまとめてくれています。

ただ、どのやり方も煎じ詰めれば、まず騒音に気づくこと、そして少しでもある静寂にできる限り深く入り込むこと‥というのが結論になります。
もっと具体的にやり方を知りたいという方はぜひ本をお手にとってみてください。

「静寂の技法: 最良の人生を導く「静けさ」の力

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