2MEN SHOW stanley wong X anohtermountainman

原研哉氏のTweetからこの企画展「2MEN SHOW stanley wong X anohtermountainman」を知り、興味を惹かれて、初めてgggに行ってみた。

Stanley Wongについては何も知らないし、もちろん作品も見たことがなかった。この人の携わっている分野はとても広くて何という言葉でくくるのかもよくわからない。
でも、わからないけれど、物凄く印象に残った展示会だったので、備忘録として書いておく。
いつもにも増してまとまらない文章だが、無理にまとめるのも何か違うような気がする。読み難くてもうしわけない。

[red-white-blue] という作品。
これは私たちの世代には懐かしい昔の赤・白・青のレジャーシートだと思われるものを使った作品。ああ、懐かしいこの材質と色合い。

Stanley Wongの作品はどれもなんだか懐かしい感じを思い起こす。
それは同じアジアの人間だけに通じるものなのかもしれない。
日本の盆栽のような写真もあるのだが、でもこれは日本のものとは違う…というのがはっきりしている。
でも、何が共通しているもので、何が違うものなのかは言葉では説明できない。
アジア圏の背景を持たない人からみるとこれはすべて一緒に見えて、一律にエキゾチックな感じなのかな…とも考える。
当たり前なのだが、そうか観る人によって作品の見え方というのは違うのだ、というのを痛感する企画展だった。

映像作品のなかで[selected tv ads / 16’ 35”]というものがあり、解説を読むとどうやら、彼が関わったTV広告を切り貼りして寄せ集めたもののようなのだが、私はこれに猛烈に惹きつけられた。
たまたま私が観たものはスポーツ選手であろう人が陸上競技をする場面だったのだが、私はこれまでスポーツをする人の姿がこんなに美しいと感じたことがないことに気がついた。
その姿は不思議にものすごく私の気持ちを捉えて、気がつくと涙ぐんでいたぐらいだ。もちろん、私はまったく陸上選手に思い入れなど持たない人間なのだが。

どの作品にも共通するのだが、ごくごく普通のものやシーンが、Stanley Wongの手を通じると、途端に美しくなるようだ。
そして多分、彼はそこに対して何かすごく手を加えて変質させているわけではなくて、周辺の余分なものを削除したり、スローモーションにしてみたり、ものすごくクローズアップしてみたり…と、いうようなことしているだけではないかと思うのだ。
彼の手にすごいものがあるのか、それとも彼の目がすごくて、私たちには気づかないようなものを気づくことができるのか、いったいこの人の目には日常はどんな風に見えているのだろう…

自分たちの日常ってものすごく美しくしたり、醜悪にしたりすることが多分、私たち自身でできるんだろうな…というよなことをぼんやり思ったり、

とにかく何かを見る度に様々なことが、頭に浮かぶのだ。
いったいこれは何が起きているんだろう…、どうしてこんなことが起こせるのだろう…と、そしてそんなことをぼんやり思い巡らせていると、[live now 2 :now]という作品が目に飛び込んでくる。
あちこちで。
デジタル時計の表示はNOWとなっている。
それを見て、ああ、色々考えずにとにかく作品を観ることに今は集中しようと。

ちょっとびっくりしたのは、「恋する惑星」のポスターがあったこと。
この映画は好きで映画館で2回観て、さらにサントラも持っていた。
でも随分と長いこと忘れていた。
ポスターを観た瞬間に映画の音楽とそのシーンに頭の中がハイジャックされた。
好きなものって忘れないものなんだ。

展示会場はそれほど広くないのだが、ものすごく深いプールにでも飛び込んだようなどっぷりとした感じにつきまとわれながら、ギャラリーを後にした。

食事というのは、誰とどういうシチュエーションで食べるか、またその時の自分の心身の状態はどうかで、感じられる味が随分と変わると思う。
多分、アートとか美しさとかっていうのもそうなんじゃないかな…、バックグラウンドとか、その日のコンディションとか、タイミングとかで随分と印象が変わるものなのじゃないかな…

現代アートに限らず、本でもそうだが、同時代に作者が生きていて、次々に作品を生み出していく背景がある程度近いところで理解できて、立ち会えるって何かしら共通しているってすごいことなんだろうな、現代アートってその作品が良いとか悪いとかという以前に、すこぶる面白いものなんじゃないかな。

■ メッセージ

本展「2 MEN SHOW /stanley wong×anothermountainman」は、グラフィックデザイン、広告、映像ディレクション、インテリア、プロダクト、ファッション…etc、横断的で多様な専門分野にわたる、30年以上におよぶ私のデザインの旅である。私にとって初のデザインの個展として、皆様にぜひご紹介したい-コマーシャルの世界(スタンリー・ウォン)から始まった私のクリエイターとしての実績が、個人的価値(anothermountainman)へと移行し、そしてそれが進化を遂げた今(スタンリー・ウォン×anothermountainman)、商業を目的とする企業が社会や生活の価値を訴えるために、スタンリー・ウォンとanothermountainman、双方と協働するようになるまでの姿を。
スタンリー・ウォン(anothermountainman)

■ スタンリー・ウォン(anothermountainman)

中国・香港生まれ。香港工商師範学院(現:香港教育学院)デザイン&テクノロジー専攻卒業。グラフィックデザイナーとして5年間活動した後、広告業界に入り、多くの国際的な広告会社のクリエイティブディレクターを15年にわたって務めた。テレビコマーシャルの演出を手がけるようになり、2007年に84000 Communications Limited を設立。美術、写真、グラフィックデザイン、広告の分野で、ワンショウのゴールドペンシル2回、D&AD賞イエローペンシル、東京TDC賞他、国内外の賞を多数受賞。作品の多くは海外の著名な美術館の展覧会に出品され、パーマネントコレクションとなっている。また、2012年5月、香港芸術発展賞2011年アーティスト・オブ・ザ・イヤー(ビジュアルアート部門)に選ばれ、香港藝術館の2012年香港現代芸術賞を受賞。

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