ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター

「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」の展覧会(2020年1月9日〜3月8日)に行ってきた。
前回2017年に行われた展覧会ですっかり彼の写真のファンになってしまった私には待望の展覧会。

「ニューヨークが生んだ伝説 写真家ソール・ライター展」

前回同様に、彼の写真の間には彼の言葉があり、言葉と写真のピタリと合ったところがまたグッとくる。

We live in a world full of expectations, and if you have the courage you ignore the expectations. And you can look forward to trouble.
(世界は他人への期待で満ちている。期待を無視する勇気があれば、面倒を楽しむこともできる)

I think that mysterious things happen in familiar places. We don’t always need to the other end of the world.
神秘的なことは、馴染み深い場所で起こる。なにも、世界の裏側まで行く必要はないのだ。

【展覧会感想】

写真の手前部分は決して明るくない。かなり暗いものも多い。
そして、その先にあるのは、青いスカート、緑のドレス、赤い傘、黄色、窓越しに雪、雨、それから窓や鏡に写り込んだものたち。
被写体に気づかれずに撮ったと思われるものが多く、その写真はわざわざ撮ったというよりも、たまたま見かけたから・・シャッターを押したかのように見える。
例えば、「タナガー・ギャラリーの階段」は、建物の外階段の隙間から撮影したと思われる作品、その先にはワイシャツ姿の男性たちが写っている。階段の影が男性の白いワイシャツに網目模様のように映っている。

例外は商用のファッション写真、それから子どもたち、そして家族や身近な人々。
これらの写真は正面から撮っているものが多い。
ソール・ライター自身の年譜を読むと、結婚や子供の存在はないように思えるが、子供を写した写真を見る限り、この人は子供好きなだったのではと感じる。
子どもたちがとても子供らしい表情で写っている。
それは必ずしも笑顔の写真ばかりではない。
私が好きなのは、「そばかす」という挑むような強い目をした女の子を被写体にしたモノクロの作品だ。
確か、この女の子は2017年にも別の作品で写したものがあったように思う。

【ソームズ・バントリー】

前回も女性たちのヌードの写真の中に含まれていソームズ・バントリー。
彼女は仕事と私生活でもっとも深遠だったらしく、正面から撮ったもの、愛情や親密さがはっきりと表れているものが非常に多かった。
くっきりとした笑顔がとても魅力的な女性だ。(おまけに元ファッション・モデルでもスタイルも抜群)

I shared my life with Soames. We had moments where, in spite of all the problems, we had an inability to concentrate on misery properly, and a tendency to enjoy life. And I don’t think that’s such a bad thing.
(私はソームズと人生を分かち合った。いろいろな問題もあったが、不幸に向き合うよりも、人生を楽しもうとした。それはそんなに悪いことではなかったと思う。)

I liked looking over and seeing Soames rocking away and listening to music.
(彼女が揺り椅子に座って音楽を聴いているのを眺めるのが好きだった。)

【2020年の展覧会で特に良かったもの】
「スライドの部屋」

展覧会ではよく作家へのインタビューや、製作風景のフィルムを流すことが多いが、ソール・ライターのものは、彼の写真スライドがカシャッカシャッというアナログな音とともに切り替えられていくもの。
そしてその両側の壁に彼の部屋であろう写真がまた流れていく。
行かれる人は、ぜひこちらのお部屋も。

「コンタクトシート」

写真を撮影するときに何カットも連続で撮るのだと思うが、その流れが見えるコンタクトシートが今回の展覧会ではたくさん展示されていた。
彼が被写体をどう見つめていたのか、そこにはどんな空気が流れていたのかが見えてくる。
本(後述)には収録されていないのが残念だが、男の子2人ものが個人的にはツボだった。ファッションモデルが写っているものもモノクロなのが、かえって洒落ていて素敵(こちらは本に収録されている)

「スニペット」

名刺サイズに現像した写真たち。
ソール・ライターが撮影した身近な人たちの写真が主で、無造作に手でちぎったという感じのもの。
手元に置きたい好きな写真たち…という温かい雰囲気。
実家の引き出しにあった整理されていない古い写真を子供の頃、こっそり見たことをリアルに思い出した。

写真撮影について

基本、写真撮影はできませんが、最後に一箇所だけ写真撮影が可能な場所がありました。
本当に出口の手前なので、うっかり「写真撮影可」のマークを見落としそうな感じですので、写真を撮りたい方はご注意を。

【ソール・ライター関連動画】

永遠のソール・ライター展

2017年の前回の展覧会用に作られたもの。

映画「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」予告編

こちら現在、Bunkamuraにて期間限定で追加上映中の様子(2020年1月30日まで)。詳細はこちら
なんとか足を運びたくて、あれこれ調整中。

ソール・ライターとその作品についてのYoutube動画:(英語)

ソール・ライターが亡くなって早い時期にすぐに制作されたもの?なのかな。
21分あって、まだ私も冒頭しか見切れていない。

展覧会についての書籍

「永遠のソール・ライター」 小学館

今回の2020年の展覧会に合わせて出版されたもので、作品もソール・ライターの言葉も盛り込まれています。
出版社が前回から変わったのはなぜなんだろう。

「ソール・ライターのすべて」 青幻舎

前回の2017年の展覧会の際に出版された本だと思うのですが、私は今回のBunkamuraの展覧会会場で購入。
(確か、前回の展覧会に私が行ったときは入荷待ちで諦めた記憶が…)
こちらには翻訳家の柴田元幸さんの文章も掲載されています。

一応、リンク貼っておきますが、なぜかタイトルの横に「(英語) ペーパーバック」と書いてあるのが気になります。日本語版が買えるとは思うのですが・・。

【その他ネット掲載の記事】

今回の記事を書く際にあれこれ見ていたら、ちょっと長めの読み応えのあるものを発見しました。

ほぼ日刊イトイ新聞:ソール・ライターについての記事

2017年の展覧会に合わせて書かれた記事のようです。
4回に渡って連載されていて読み応えがあります。

https://www.1101.com/saul_leiter/2017-05-25.html

和樂:「未だ多くの謎に包まれている写真家ソール・ライター。ストリートスナップと広重の浮世絵には共通点があった!」

こちらは、2019年12月の記事で今後のソール・ライター関連の展覧会についての情報もあり。浮世絵はソール・ライターの部屋にもたくさんあったようです。上述の「スライドの部屋」の写真で何枚か見ました。

https://intojapanwaraku.com/jpart/50520/

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