ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか

刺激的なタイトルだ。

丸善(お茶の水店)の店頭で手に取り、思わず深く頷いてしまった。
そして、想像した。自分の中から「先延ばし癖」がなくなったら、どんなに素晴らしいだろう…と、それと同時にこれまで自分が先延ばしをしてきたことで、生じたトラブルが次々と回想される。

あまり考えることなく、レジで清算してもらい、早速オフィスで読み始める。きっと先延ばしを改善するためのすぐにできるHowTo満載なのだろうと思った。

ところが、これは先延ばしを徹底的に研究した本であることがわかった。DNA解析、脳科学、進化生物学、心理学をあちこちから援用し、徹底的に解析している。巻末についている参考文献からもわかるようにこれは、学術論文の体をなしているのである。

procrastination:「自分にとって好ましくない結果を招くと知りながら、自発的にものごとを延期すること」
これが「先延ばし」の定義である。

著者自身がほとほと自分の「先延ばし」に手を焼いた(多分、今も続いていると思うのだが)経験が素材となっている他に、この本のためにオンラインゲームにはまって、いかに誘惑が手時かにあると先延ばしが誘発されるか…といったことを実体験を持って書いている。

私たちが「先延ばし」をする理由としてよく挙げるのが「追い込まれたほうがいいアイデアが浮かぶんですよ」ということ。企画書の提出、レポートの提出といった場面であなたもこんなことを口に出したり、思ったりすることがあるのではないだろうか?

そんな言葉は著者の正論の前では頭を垂れるしかない

しかし、土壇場で生まれるアイデアは、早い段階から取りかかる場合より質も量も劣る。厳しいスケジュールのもと、強いプレッシャーがかかる状況では、概して人間の創造性が低下するからだ。締め切り前夜に突貫工事で課題に取り組み、目がしょぼしょぼしてきた午前三時に思いついたアイデアは、たいてい平凡で、ぱっとしない。画期的なアイデアとは、一般的に、念入りな準備の上にはな開くもの、骨折って題材への理解を深めたうえで、時間をかけてアイデアを「孵化」させる必要があるのだ。

著者も述べているし、私もコーチングの中で感じるのは、人は短期的には「やったこと」を後悔するが、長い目で見れば「やらなかったこと」を後悔する。この後悔は深い。

前半はいかに古代から人々が先延ばしを戒めてきた歴史を振り返り、典型的な先延ばし事例とセルフチェックができるようになっている。後半からは、先延ばし克服の行動プランがいよいよ公開される。

<先延ばし克服の行動プラン>
1. 成功の螺旋階段
2. 鼓舞される物語・仲間
3. 脳内コンストラクティング法
4. 失敗を計算に入れる
5. 先延ばし癖を自覚する
6. ゲーム感覚・目的意識
7. エネルギー戦略
8. 生産的な先延ばし
9. ご褒美効果
10. 情熱を燃やせる仕事
11. プレコミットメント戦略
12. 注意コントロール戦略
13. ゴールを設定する

最後にこれらによる克服プランで、人生を取り戻して行く三人のドラマが描かれている。こんなにうまくいくか?と思いつつも、読んでいて楽しい。やる気になる。

まとめとすると、この本を読むと、「先延ばし癖」の怖さが身にしみてよくわかる。さらに自分の先延ばしタイプを知ることができる。(私は衝動的欲求にものすごく弱いというタイプだというのがよくわかった)。タイプを知ることから、どの克服プランを使うべきかがよくわかる。

ということで、かなり実用的な本。私はこの本を読んで以来、先延ばし癖が47%改善されたと感じている(当社比)

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