法律知識はビジネスマンの必須スキル

 ビジネスマンなら身につけておきたいスキルとして、よく挙がるのは、以下の3つ。

・会計/ファイナンス
・英語
・IT

 確かにこの3つも大事だと常日頃、私も感じますが、その中にぜひ「法律」を入れてほしいと最近しみじみ思います。あなたとあなたの勤める会社のビジネスを守るという意味では、「法律」というのは絶対的に必要です。そういう意味では、上記の3つのスキルの前につけておく必要があるともいえそうです。

 特に仕事をする人には誰にでも必要になるのが労働法の基礎知識です。

「年功序列の賃金制度」から、「成果主義の賃金制度」へと日本の社会は大きく動いています。おそらくこの流れが逆行することは、現在の経済状況から考えるにまずあり得ないことでしょう。年功序列賃金が崩壊するということは、これまでの労働組合をベースとした従業員への一律ベースアップという概念が崩れ、個別交渉・個別対応に変化してきます。

 個別対応になると、まず、当然に従業員間の賃金に差が如実に表れてきます。昇進についても大きな格差が生まれてきます。
このとき、上司による人事考課はこれまで以上に非常に大きな意味をもつようになります。今まではさほど人事考課の結果もたらされる給与・待遇に大きな差がなかったのが、これから大きな影響力を持ち、しかもシビアに反映されることになります。
…となると、あなた方の部下は、当然に公正な人事考課を今まで以上に期待するようになります。
なぜならあなたの人事考課によって、部下たちの生活は大きく変動するからです。

 人事考課の結果、部下の降格や賃金の引き下げが行われた場合には、これまでは(少ない件数とはいえ)組合に持ち込まれていたものが、直接、部下対会社の個別紛争になっていきます。現実に成果主義導入後の個別賃金についての個別紛争の件数は増えています。

 また、成果主義の導入は、社員の流動化をもたらします。経営者であるあなたは、転職をめぐる紛争、(労働法ではありませんが)役員の競業避止義務などについて現在の日本の判例がどのようになっているかご存知でしょうか?

 一方、人事考課を受ける部下であるあなたは、成果主義導入に伴い、一方的な就業規則の変更を会社側から受けるかもしれませんし、大幅な減給になることもあるかもしれません。
日本の労働法があなたをどこまで守ってくれるかご存知でしょうか?

 特にベンチャー企業の経営者・役員の方と話していると、それ絶対、法律的にOUT!ですよーというケースが多いのです。
「顧問弁護士はいないのでしょうか?」と伺うと、コスト削減のために確認事項があった(あるだろうと感じた)時にだけ、随時質問するという形態で、その会社の経営内容全般については見てもらっていないということが多いようです。
 特に労務管理がものすごく甘いケースが多くて、それ労使関係がうまくいっている時は問題ないですけれど、一度こじれるとかなり危ない…というケースが多いです。ベンチャーというのは、結構雰囲気とかノリで従業員が集まっているケースもあるので、一人が反乱を起こすと、それに付随してあれこれ不満が噴出し、裁判沙汰になるケースがかなりあります。
 そのときに労務管理が無茶苦茶だと、会社側はほぼ負けてしまいます。

 うまくいっているときには双方の合意で済むことが、いったんぎくしゃくし、争い始めると最後に勝敗を決めるのは、法律です。

 トラブルが始まるまえに、ぜひ基本ところは押さえておきたいものです。トラブルを未然に防ぐためにも必須です。
書店には法律関係のやさしい入門書というのが実はたくさん置いてあります。手軽に入手できる新書にもいろいろとあります。
ぜひ興味ある分野から一冊ずつ手にとってみてください。法的視野を身につけてみてください。
大きな判決については、新聞にも報道されますので、ぜひ毛嫌いされず少しでも読んでみてください。

冒頭にあげた3つのスキルを身につけることよりも、私たちの身近にとりまく法律のほうが、身につけやすく、さらにはその知識が役立つ場面に立たされることが往往にあると私は思うのです。

追伸:このブログで取り上げた成果主義人事と労働法について、ぜひ真面目に考えてみたいという方には、以下の本がお勧めです。
成果主義人事をめぐる労働法上の問題を中心に、人事管理や労使関係の面からの洞察をまじえて総合的に学べます。

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