DIC川村記念美術館

以前からずーっと行きたかった「DIC川村記念美術館」にようやく訪れることができました。
仕事が近くであったので、それに合わせての訪問です。
この日は、特別な展覧会はなく常設展示のみでしたが、平日ということもありかえって空いていてよかったのかもしれません。
お天気もよくちょっとした小旅行気分で、マインドフルに楽しむことができました。

【アクセス】

行きは東京駅八重洲口から京成バスで一本で行ってきました。平日ということもあって、バスはガラガラに空いていて快適でした。
こちらのバスは私が行ったときは、1日1便でしたが、時期によって変わることもあるようです。

帰りは無料送迎バスが最寄り駅まで出ていて、それに乗ってJR佐倉駅まで出ました。途中隣接しているDIC研究所にも寄り、そちらにお勤めらしき人も乗ってこられました。ずいぶん、美術館用の送迎バスの本数があり、なんとリッチな美術館!と思っていましたが、社員の方の送迎も兼ねているなら、なるほどです。

【レストラン/ギフトショップ】

バス停からすぐのところに、あるレストラン「ベルヴェデーレ」。
バスで11時過ぎに到着し、いきなりレストランへ。
普段自分のオフィスでのランチは、大体11時半ぐらいなので、お腹が空いてしまったのです。
そんな人いるかしら?と、ちょっと心配でしたが、4組ぐらいのお客様が、すでにお食事されていて、ホッと一安心。
庭園が見渡せるように大きく窓が取られており、雰囲気のいいレストランです。
食事はパスタセットにスープをつけたものをいただき、2100円だっかな?
前菜で出た地場のしいたけを使ったゼリー寄せとイチゴのソルベがとても印象に残っています。
特に私あまり甘いものを食べないし、さらに冷たいものは身体が冷えるのでほとんどいただかないので、ソルベが美味しいと思うってかなり珍しいことです。甘差を抑えて素材の味が活かされていることと、香りの良さに、ハッとしました。

レストランの出入口すぐのところに、ギフトショップがあります。ギフトショップとミュージアムショップというのが別になっているって珍しいケースだと思うのですが、こちらは特にこの美術館と関係なくちょっと洒落た感じで、センスの良いものがたくさんあり、まさにギフトとスモール・プレゼントに最適な品が置いてあるお店でした。

【印象に残った作品】
< レンブラント「広つば帽を被った男」>

この美術館の代表的な収蔵作品でもあり、レンブラント飴という飴がショップで売っています。
飴の絵が、この絵となっています。絵そのものの好き嫌いは特にないのですが、とにかく細部まで丁寧に描かれていて、肌は触れば温かさがありそうだし、服の質感などもすごくリアルで、近くで観てその上手さに驚かされました。
(この絵は本当に近くで鑑賞できるようになっています)

<ピカソ「シルヴェット」>

え?これピカソの作品なの?こういうのも描くんだ‥と思ったのがこちらの作品。
帰宅してからネットで検索して、わかりましたが、この絵のモデルの名がシルヴェットで、金髪の20歳の女性だったようです。
これをモチーフにした何枚かの絵があるようですね。こちらの美術館にあるものは、本当に肖像画という感じで、言われなければ私にはピカソだとはさっぱりわからなかったでしょう。

<ブランクーシ 「眠れるミューズⅡ」>

ルノアール、シャガール、ボナールと著名な画家たちの作品がたくさん飾られるお部屋でもっとも印象に残ったのが、この作品。
女性の頭部のみという作品で、本当にミニマルな作品なのですが、ぐるぐる回ってどこから眺めても確かに若く美しい女性にしか観えなくて、感動しました。線が多い、色が多い、複雑な形だから表せるものが多いというわけではないことを実感。

<ジョージ・シーガル 「ガートルード:二重の肖像」>

ジョージ・シーガル特有の石膏像と絵画が並ぶ作品ですが、時間の経過を感じさせるその対比と作品を囲う柵がその時間を閉じ込めているかのような印象で、寂しいような滑稽なような不思議な感情を呼び起こします。

<マーク・ロスコ 「シーグラム壁画」>

この美術館の目玉作品でもあるマーク・ロスコ 「シーグラム壁画」は、専用のお部屋が用意され、本当に圧巻です。作品の大きさ、赤という強い色彩、私などは少し恐怖心というには大げさですが、なにか怖気づくような気を感じました。

せっかくだからと、室内のソファに腰掛けてゆっくり作品を味わおうとしていたところに、10代半ばのスポーツ刈りのラフな普段着の男の子がやってきました。一人で来ているように見られますし、現代アートにこのぐらいの男の子が興味があるって少し珍しいことのように思われましたので、その背中を眺めていると、彼は一つ一つの絵の前中央に、文字通り立ちはだかって数分眺め、その後順繰りと同じように他の作品と対峙していくのです。

彼の背中を見ていると、確かに絵から発するエネルギーのようなものを全身で受け止め、体感しているかのようです。
この日は館内が空いていたからこそ、こんな鑑賞の仕方もできるのです。
彼が出ていくと、私も同じようにして鑑賞してみました。実際に試してみると、単に絵を眺めているのとは全く違う感じです。

若い頃、ある先生に「神社の鳥居が赤いのは、赤というのが人間の体内の成分(イオンだったかな?)を活発化させるということを、昔の日本人が体感として知っていたからなんですよ」と教わったことを思い出しました。

単純に「鮮やか」とか「美しい」とか言えない、その赤は私自身がまるで人の胎内の中にでもいるかのように感じさせました。

<サイ・トゥオンブリー 「無題」>

マーク・ロスコの部屋を出るときは、なんだかそのエネルギーに圧倒されたようでちょっとクラクラしてしまいました。
そこから階段を昇って待っていたのが、「トゥオンブリー・ルーム」です。
明るい窓から差し込む光と美しい緑、大きな「無題」という静かな作品、白を貴重としたゆったりとした部屋は、その前のマーク・ロスコの赤を全部きれいに洗い流してくれるような何とも静かで清潔な祈りのような場所に感じられました。
随分と長いことこの部屋にとどまり「無題」と呼ばれる作品を観ていました。

【庭園】

庭園はこれだけでも来る価値ありで、近隣の方はそんなふうに楽しまれている方もたくさんいるようでした(うらやましい〜)
私が行った時期は、お花の少ない時期でしたが 河津桜や白木蓮が咲き、白鳥のいる池や広大な緑と大きな空は、東京からの小旅行という感じで、とっても癒やされました。
お庭でもかなり長い時間ぼーっとさせていただきました。

【まとめ】

館内の説明によれば、この美術館は印刷インキ、顔料などの製造・販売を行うDIC株式会社が運営を行っており、2代目の社長さんから美術品の収集が行われたようです。現代アートがコレクションに加わったのは3代目の社長さんからだとか、もともとはこの他に日本画の収蔵作品などもあったようですが、こちらは現在手放されてしまっているようで、私は観ることができませんでした。
残念ですが、高価な芸術作品を購入し、企業が美術館を維持するというのは本当に大変なことなのだろうなぁとも思います。

DIC川村記念美術館は、我が家から決して近くではありませんが、空間が贅沢に使われていてゆったりと楽しめましたし、トゥオンブリー・ルームには惚れ込んでしまったので、
ちょっと気持ちが疲れたときなどに逃避行的にちょくちょくきたいなぁと思います。
ということで、リピート確定です。

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