不況とコーチングとマッチポンプ構造について

どこの会社にお邪魔にしても、聞こえてくるのは、不況の話ばかり。
友人に会えば、リストラだの賞与カットだの・・・・とこれまた不景気な話が多い。
さて、そんななかで、「で、コーチングビジネスというのは大丈夫なんですか?」と聞かれる。
その中には、『やっぱり不景気で大変なんでしょう』という気持ちがひっそりと隠されている。

不景気で煽りをくっているプロコーチは確かにかなりいると思う。そしてもう一方で不景気に強いコーチがいる。

前者と後者の違いは、誰がそもそもコーチングの料金を払っているかだ。
前者は法人を相手にしている。
法人はダメ。
必須にならない経費は削除される。

コーチングは研修費用の一環として計上されることが多いが、研修にも優先順位があって、たとえばその研修を受けないとどうしても、業務で仕事をが行えないものから優先されていくので、当然のようにコーチングのようなタイプのものは削られていく。

まぁ、法人相手のコーチングで、実際にコーチングそのものを請け負っているプロ・コーチというのは、まだまだ少なく、実態としては管理職向けのコーチング研修などで食べている場合が多いとはいえ、これも事情は同じ。やっぱり予算が削られやすい研修なのだ。
コーチングのスキルなんていうのは、2,3日の研修ですぐに使えるようになるわけではなくて、会社のカルチャーそのものを本来変えていかないとならないぐらい時間のかかるもの。

ましてや、この不況。人はたくさん余っている使えなければ、プレッシャーをかけて自主退職まで追い込み(日本の労働法は正社員の解雇に厳しいので、こんな風なことが日常茶飯事)、良さそうな人材を採ってくる。
もっといえば、いまはマネージャーはいらない、プレーヤーだけでOKと思っている現場も出てくる。

法人向けのコーチは一社取れれば、それだけで結構安定するし、これまでの自分の仕事のコネクションから取れるケースが多いので景気の良い時にはそれなりに良かったけれど、今後はどうなるかな?という気がする。

さて、後者の不景気に強いコーチは、クライアントが個人で自分自身でお金を払っているタイプ。

不況になると、将来のために自己投資をする人が増えるのは、トレーニング業界では常識だ。
コーチングもまた然り。
さぁ、じゃぁ全員コーチは個人クライアントを持つように変化しようとすればいいのか?と言うとこれまた結構難しい。
どんなビジネスでもそうだけれど、個人に営業やマーケティングを打ち、メッセージを届けるのは、時間がかかるし、かなりノウハウがいるのだ。

でも、そのノウハウをつけていこうとする努力はすぐに始めたほうがいい。
そうでなければ、あなたはいつまで経ってもプロコーチにはなれない。プロコーチの定義は、コーチングで飯が食っていける人であることである。

コーチングの業界で兼ねてから、私が個人向けコーチングの発展しない理由として、常々思っているのは、コーチの勉強している人同士で、コーチングをし合うばかりで、本当にコーチングを全く知らない人を相手に営業もマーケティングもしないことだと思っている。
典型的なマッチポンプ方式だと私は思っている。

コーチングを勉強している人に対してコーチングをするのは、コーチングというものを全く知らない人にコーチングするより10倍ぐらい簡単だ。
前者はコーチがどうしたいかを察してくれるからね。

でも、お互いでコーチングごっこをしているから、お互いに安価で提供し合って契約期間は短い。
そのメンバー間でまたセミナーなどをやって、似たようなその手のセミナー好きな人たちを集めあって、またコーチングする。
その手のセミナーの募集は、仲間同士のメーリングリストやブログでお互いに情報をやり取りし合えるので、これでまた楽に集客できるので、いつまでたってもマーケティングや営業の勉強にならない。

そして、仲間うちばかりのコミュニケーションだから、だんだんその空気に染まり、コーチ同士しか知らないような資格を取ることや、研修に出ることで一歩抜きんでたコーチになるように勘違いをしてくる。
宣伝文句のように、XXXの資格を取ったとか、XXXXの研修受けたとか、書いていあるPRを見ると、「そんなのエンドユーザの人からみたら、XXXが何なのか知らないからさー。もっと違うPRに書こうよ」と思う。

何百人コーチしました・・・・というような、コーチングの宣伝文句を見るたびに私は、どうしてそんなにしょっちゅうクライアントが変わっちゃうの?と逆に不思議に思う。誰も契約継続してくれないの?
それともそれは、トレーニングの一環としてやったセッションの練習もカウントされているのだろうか?だとすれば、それはちょっと誇大広告じゃないかなーと思うのだ。
無償のセッションはカウントに入れるべきじゃないと思うんだけどなー。

あー、なんか今日はオフィスにクーラーを入れていないせいか、暑いのでついつい辛口業界批判みたいになってしまった。(本当はこんなの全然甘口だけど)
コーチングってすごくパワフルで、人生を変えるぐらい力のあるものだと思うのに、業界の変な流れでおかしなことが多くて、腹が立つのであまり見ないようにしているつもりだけれど、結構イラっとしているのだね。
そろそろクーラー入れて、良い人になろーっと。

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コメント

  1. まちゃぴー

    日頃モヤモヤと思っていたことを、ズバッと書いてくれた!
    後半部分はプロフェショナリズムとは何か?を問うているのだと理解しました。
    「マッチポンプ構造」から脱しない限り、レッドオーシャンの中に居続ける。またコーチも職業として認知されない、業界も成熟しないよね。
    その構造の中にいて、ヤバイと認識できるかどうかが分岐点かな。

  2. コメントありがとう。
    おかげて、ちゃんとしたビジネスマンにはやっぱりわかってもらえるんだと確信しました、このマッチポンプは絶対にまずいって。
    メッセージとしては、居心地のいいぬるま湯から飛び出さないと茹でガエルになっちゃうよ・・・というのと、もうちょっと業界の成熟考えて行動しようよというところです。

  3. コーチングうけよう

    はじめまして。
    コーチング業界の現状を詳しくは知っているわけではないのですが、出版される書籍の数や、世で騒がれているほど、コーチングの市場は広がっていないな、と感じていました。
    マッチポンプ的にお互いをコーチしているという感覚は、何人かのプロコーチの知り合いを見ていて、まさに感じるところはありますね。
    日本のコーチング市場を創っていくという気概が必要だなと感じました。

  4. はじめまして。コーチング情報を一括提供されたサイトを運営されているのですね。
    マッチポンプを後押ししていることの一つにコーチングの資格試験制度もあります。
    そんな話もまたどこかで触れていきたいと思います。
    確かに市場を創る人が不在です。

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