読書メモ:たりる生活

作家の群ようこさんが「前期高齢者(このキーワードは本の中で繰り返し出てくる)」となり、広い家から、荷物を手放し、家賃を下げて手狭な部屋に引っ越しをする。

これにまつわる物件探しから、モノの断捨離、そして引っ越し手続き、その後の片付けまで、著者のいつものリズムとテンポで書かれていて、とても読みやすい1冊になっているがこの「たりる生活」という本だ。

どのエピソードも身近に感じるものばかりだが、とりわけ印象に残っているのは、足袋が80足もあった話。
足袋というのは、基本的に足にピッタリしたものを履き、シワが寄らないのが美しいとされている。
一方でサイズがちょっとでもキツイと、とても足が痛くなるシロモノでもある。

私も経験があるが…、というか、正確には今も困っているが、自分にピタリと合う足袋を探すのはとにかく大変。
最近はストレッチ素材もあり、ネットであれこれ探せるので便利になったが、これはこれであれこれ試せるのでますますモノが増える。
著者の場合は、サイズが合うとまとめ買いをしていたようだけれど、これがまたなぜか年齢を重ねると合っていたものが、足の形が変わってしまうのか急に合わなくなることがあり、全部新品のまま使えなくなることが、多々あって…気がつけば80足もあったという話のようだ。

私は足のサイズが微妙で、誂えようかと思って京都の足袋屋さんで相談したら、これなら大丈夫かも‥というそこにしかないサイズのものを出してもらい、ある程度気の張った外出にはそこの白足袋と決めている。
ようやく巡り合っった足袋なので、今でも開けていない袋が何足分かあるし、そして古くなってもなんとなく処分できないでいるのは著者と同じだ(家の中でなら十分履けるという気持ちがそのにはある)

愛用している足袋の袋

分銅屋さんの足袋

しかし、いざという時のために取ってある新品のこの足袋が、突然履けなくなっていたらかなりショックだ。

とは言え、普段は、汚れるのも面倒だし、サイズがピッタリ合っていなくても、普段着物着ない人にはそうわからんだろう…と、柄のストレッチ素材の気楽なモノを履いている。(そして、結局中古の白足袋はほとんど履いていない)

この本の中には、同じような話が洋服でも登場し、似合ったので何種類も同じものを買うとある日急に似合わなくなったときに全部捨てる羽目になったというのがあった。

私も以前は、シンプルなニットやトップスは、これは似合う形かな‥と思うものは、色違いで何種類か買っていた。
ところが、ここ最近この手のニットが急に似合わなくなったというのを経験している。

以前は、ピッタリと合ったサイズのものを着るほうが、布の面積が少なくて細くスタイルよく見えるようだったのだが、体重は変わらなくても、ラインが変わったのか、とくに薄手のニットでピタリとするものが似合わない、胸から腕にかけての線がなんだかもたついている。
この冬は、試しにふんわりしたニットを2枚購入したが、どちらも評判が良かった。
年齢を重ねてなんだかピッタリしたものが貧相に見える容貌になったのかもしれない。

この本を読んでいると、どうもこういうことは年齢とともにどんどん増えていくようなので、気をつけなくては‥と。

高齢化して面倒なので、一度で済ませるようにしたはずの「まとめ買い」が、「たりる生活」ではなく、「疲れる生活」になってしまっては本末転倒。

逗子に暮らすようになって、とにかく洋服を買う場所がないので、所要で都内に出た際に買い物というのが定番化している。
いちいち出てくるのも面倒で、買い物をして試着して良さそうだとまとめて買ったりするが、これはこの年齢になると止めたほうが無難なのかもしれない。

バッグも著者と同じように革のバッグがずっと好きだったが、30代で私もそのこだわりは捨てた。だって重いし、メンテに出すのも結構面倒くさい。
今でも革のバッグはゼロではないけれど、バッグを選ぶときは見た目よりも軽さと持ちやすさ重視になった。

「お洒落は我慢」という言葉は、前期高齢者になった私の辞書から削除した −−−「たりる生活」207ページより

まさにそのとおりだ。

次の引っ越しがいつになるかわからないけれど、我が家に引っ越しがないということは考えにくいし、今より広くなることも収納が増えることもないと思うので、この本を読んで改めてモノを減らしておかないと…と感じた。(そもそも収納が多い家ってそれ自体モノが増える気がする)

昨年の2022年の暮れは大掃除をしていない。
忙しかったのもあるけれど、2022年の2月に引っ越したのだから、今年はサボってもいいだろう‥と思ったのもある。
急に引っ越しが決まったこともあり、処分すべきだったのに、以前の住居からもってくる羽目になって、そのままのものも結構ある。
これが多分、家事にやけに時間が取られる原因の1つだというのもわかってはいる。
ゴールデンウィークはさすがに少し落ち着いてくると思うので、片付けに着手しよう。

前期高齢者に向けての良き心構えになった読書体験。

ハードカバーの装丁も文字組みも目次やノンブルなどのエディトリアルデザインも素敵だった。

この本の扉の写真

一見ピンクの本扉に見えますが…

本の扉部分

ピンクの部分(右側)、重ねて下のタイトルを透かして見せるためのもの

派手さと華やかさはないけれど、中扉の工夫など思わずニンマリしてしまう。


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