広く弱くつながって生きる

著者の佐々木俊尚さんの本は何冊か読んできた。
硬派な本も読み応えがあって面白いのだが、ライフスタイル系の本には、発想としてはユニークなやり方ではあるが、実態としては「地に足の着いた生活」をされていると思う部分が多く、そういった生活が好きな私は触発されることが多い。

今回の「広く弱くつながって生きる」は、著者の現在の生活について書いてある本だが、扱っている範囲が非常に広い本だと思う。
どんな人にお薦めの本なのか考えてみた。
田舎暮らしをしてみたい‥という人にもお薦めだし、
フリーランスとして自分の看板で仕事をしている人にもいいし、
人間関係をもっと広げたい、多種多様な人とつきあっていきたいという人にもいい。
世の中にがっちり社会貢献という生き方ではなくて、普通に暮らしつつ何かしらできる範囲で身近な場所に貢献したいと思う人にもいいだろう。
私自身は素敵な歳の重ね方の指南としてもいい本だと思っている。

人間関係は濃くなると面倒になることが多い。
濃くなると遠慮がなくなるというのもあるだろう。
私が苦手とするのは、相手の期待のようなものをうっすらと感じて、その束縛される感じだ。
小学生・中学生ぐらいの女の子のグループだと、グループでの集団行動を求めてくるタイプが結構いる。
今なら、「同調圧力」という言葉がぴったりくるかもしれない。
学校ではトイレに行くときには同じグループの子と一緒に行く(なんとなく声を掛けないといけない。「トイレ行こうかな」「あ、私も行く〜」みたいな一連の流れ)。
グループの話題で「XXの映画観たい〜」と話に出たら、勝手に一人でXXの映画を観て、それをうっかり口にすると、なぜか「ずるーい」「ひどーい」となる。
そんなグループに入らなければいい、ということになるが、それはそれで学校生活があれこれ不便なのだ。

そんなわけで大抵の場合、女の子たちは平和な学校生活のために、グループに入っていることがほとんどである。
私自身はこういうのが非常に苦手だったので、「好きな友達とグループを組んで」と言われたときようにあたかも保険のように属しているグループみたいなものはあったけれど、グループとしてあまり縛りの多くないところにいた。

そういう意味で私は本当に大人になれてよかったと思う。
ぐちゃぐちゃ言われてもあまり、気にしないタイプだとは思うのだが、言われるより言われないほうがいいに決まっている。
一人で遊んでも勉強してもぐちゃぐちゃ言ってくる人がいない‥というのは素晴らしく快適だ。

人付き合いが嫌いなのか?と言われるとそんなことはない。
新しい人と知り合うのはどちらかと言えば好きだし、人間に興味がないというタイプでもない。
苦手なのは、そういった人の中には、私達もう友だちだから何でも知らせ合おうとか、遠慮なしでいこうね‥みたいな自分の「中」みたいなところに囲おうとしたり、距離を無遠慮に縮めてこようとする人だ。
そういう意味でも、この本のいう濃くなりすぎない、でも孤立しない「弱いつながり」というコンセプトはものすごく共感できた。

もしも「弱いつながり」という言葉に興味をもって、「でも、それってどうやって作るの?弱くてもつながりって維持できるの?」と思った人は、ぜひこの本の第2章を読むといいだろう。

第3章は、そういったつながりがどうやって仕事に結びつくことがあるか?という話でこちらも日々私がフリーランスの生活で実感していることだった。
以前のブログ「スキルアップと食いっぱぐれないということ」にも書いたが、「じゃ、それを私がやりましょうか?」の一言で、仕事になることはとても多い。
私は参加したことないが、異業種交流会的なもので名前を売ってじーっと仕事の依頼を待っているよりこっちのほうがいいのではないだろうか?
私のやり方だと、その分依頼される仕事は雑多なものになるので、本来あなたが目指す仕事にありつけるかはわからない
私は、仕事は雑多であればあるほど頭を使うことが増えるし、知らないことを知る機会になるので、大好きなので気にならないけれど、スペシャリスト志向の人には合わないかもしれない。
この本にもたくさん出てくるが、こういうことがまた次の仕事との縁にも綱があったりする。

第4章は、著者のTwitterなどでもよく出てくる「多拠点生活」の話。ここは興味のあるなしが分かれると思うが、読み物として面白い。
私なども全く縁のない話だな‥と思っていたのだが、最近アウドドアで遊ぶことが増えて、多拠点生活もありかも‥と思うようになってきた(ちょっと恐ろしいけれど…)

最後の第五章は全体のまとめとなる章で、こういった弱いつながりをを増やしていく生き方が、どうして「今」増えてきているのか
社会的・経済的背景が色々と変わってきて、私たちの求めてきているものが、変わってきているという話だが、普段からうっすら感じていることも、こうしてわかりやすく文章化されると、しっかり腹落ちした。

頂上を目指す登山的な生き方も素敵だと思うが、周囲の緑を楽しみながらのんびり山歩きを愉しむというような生き方に興味がある方には、とても楽しめる本だと思う。

年齢を重ねてくると、どうしても人間は上から目線になります。私はいま56歳ですが、同世代の男性と話しているといつも「なぜそう一言、二言多いのかな」と感じます。
たとえば、「おいしいレストランに行きました」とフェイスブックに誰かが書くと、「そこもおいしいけど、このお店のほうがいいよ」などとコメントをつけたりします。はっきり言って、大きなお世話でしょう。そういう自尊心を満たすためだけのお節介が一番いけません。
大切なのは、自分が備えているある種の知恵のようなものを、求められたら提供することです。「これをやりたいんだけど、どう思いますか?」と聞かれたら初めて「こう思うよ」と答える。求められなければ、何も言わないのが肝要です。 (位置No.606)

いろいろな仕事を少しずつやり、それぞれの場面で違う人たちとつながりながら生きていく、何かの収入がとだえても、他の仕事があるから何とかなるという方法が当たり前になりつつあるのです。
そういう生き方・働き方ができるのは、いろいろなスキルを身につけているからと思われがちですが、じつはまったく関係ありません。入り口はスキルではなく人間関係です。知り合いから何かを頼まれたら、ちょっとやってみる。できそうだと感じたら、少し追求してみる。その繰り返しで、いろいろな仕事を手がけられるようになるのです。
(位置No.1049)

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