手放すということ

逗子に暮らすようになってから、どうも時間があっという間に過ぎていきます。最初のしばらくは、家を整えるのやら、集合住宅とは異なる動線をどう物を配置するべきか?などで、忙しいと思っていたのですが、なんとなく家の中が落ち着いてからも、時間が流れが早いのです。

「逗子に転居で念願のスロー・ライフですか?」などと冗談交じりに聞かれますが、どうもそういう感じでもないんだよなぁ‥というのが実感です。

先日、山好きな地方在住の方のお話する機会があり、なんでも小屋もお持ちで長期滞在も可能。山に行ってしまうとボーッと景色を眺めているだけで、一日あっという間です。

という話を聞いて、「それだ!」と思いました。

この方のお話を聞いて、自然というのはどうも人間をボーッとさせるものなのかもしれない‥と思い至りました。
今の住居は、特に眺めが良いわけでも陽当りがよいわけでもないのですが、とにかく静かで鳥と虫の声が気持ちがよく、気がつくとそれをボーッと聞いていることが多いようです。

集中力が保てなくて、どうも生産性が上がらない‥というよりも、そもそボーッとしてしまって、タスクに着手していない‥というべきでしょうか。独立した仕事部屋のおかげで、着手すれば随分と捗るのですが、まず着手が‥。

環境の変化のせいか、仕事の仕方が少し変わってきました。
具体的には、先回りして情報の仕込みをすることが減りました。
例えば、以前だと新しい仕事でUX/UIの知識が必要だな‥と思うと、その手の本をガーッと買い込んで読み基礎を固め、ネットで最新トレンドの情報収集をして‥という感じだったのですが、そういうことをしなくなりました。

以前は、なんでもかんでも自分がある程度リードしないと行けない、先に回ってつまづきやすいところを知っておかなければと、なぜか思い込んでいたのですが、最近はまずは依頼されたチームの様子を見て、全体を把握してここはプレイヤーには手が回らなそうだな‥と思うところの情報収集程度に押さえています。

勉強に対して、不熱心になったような気もするのですが、どうもあまり勉強してしまうとその知識を全部使いたくなってしまい、かえって落とし所を見失ってしまうことも多かったのではないかと、今は感じています。

顧問の仕事は、一歩引いて、全体を見て全体最適を冷静に考えることがとても大切です。
尚且その全体最適へ向かうやり方や道筋を指示命令を使わず、そういう流れやムードを作っていく。

プレイヤーやマネジメントとして現場にいると、なかなかその立ち位置には立てないので、社内に詳しくありつつも、組織の外にいるという位置づけだからこそできるということだとよく思います。

何となくそういうことが、頭でわかっていてもできていなかったのは、頭の片隅にプレイヤーとしての能力も磨いておきたい‥というスケベ心のようなものがあったからだと思います。

もちろん、今でもイザというときのために、実務能力を磨いておきたい‥という気持ちがないわけではないのですが、何しろ逗子でボーッとしちゃっていますので、本来の顧問としての仕事だけで手一杯で、自然にその部分を手放してしまったような感じです。

手放す‥というとなんだか格好いいですが、ようは手が回らないし、気持ちがそこになく、特に決意をもって手放したわけではなく、気がついたら消滅していた‥というのが正しいかもしれません。

少し話が飛びますが、本の読み方も変わってきました。
トランクルームにあった本も本棚に並べることができるようになったため、以前読んだ本をパラパラとめくり、何となくそのまま読みはじめてしまうというのが増えました。

そんな中で特に目立つのが無茶苦茶分厚い立花隆先生の「立花隆の書棚」。
著者の膨大な蔵書をすべて写真に撮り、それについてコメントをしていくという内容の本です。
2013年に読んだ本ですが、今、読んでようやく理解できた内容があったり、すっかり忘れていた部分も多くパラパラ楽しんでいます。

2013年頃は、こういった本を読んで読みたい本が出てくると「読まねば!」みたいな感じで、何となくTodoリストが出来上がってしまっていたのですが、今は「ふーん、そういう本もあるんだ‥面白いな」ぐらいで止められるようになりました。

読めば読むほど、足りない足りない‥と思っていたのが、いつの間にか力が抜けたんだなぁ…と感じました。
ご縁があれば、その本はきっと私の目の間にやってきて、読むだろうしなければないでそれでヨシと思えるようになったのは、私にとってはとても大きな変化です。

数年前まで、頑張って色々と手放そうと考えていた時期があったように思うのですが、どうも「手放す」というのは、意識しているうちは中々難しいんだな‥と禅問答のようなことを、ぼんやりと思う今日このごろです。

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