逗子日記:二〇二二年八月 綿柎開 (わたのはなしべひらく)

室温が上がったのかエアコンが急に動き出し、その風で4時前に目が覚める。
夫がすでに起きているかと思い、隣を見ると布団そのものがなくてドキリとする。昨夜は仕事で北関東に泊まりだったことを思い出す。
歳をとって、配偶者が先に亡くなった場合は「ああ、そうだ、もういないんだ」とこういう風に何度も感じるのかとやけにリアルに腹落ちする。

もそもそ起きて、白湯を飲みながら昨日「こよみ」さんで購入した水羊羹を食べる。「おめざ」がアイスじゃなくて和菓子っていうのも渋いというかなんというか‥。
こちらの水羊羹は初めていただいた。なんというか、あ、これ小豆でできているんだ‥という「豆」をくっきりと感じさせる味で単純に甘いだけではない。
健康的で素朴な甘さ、そこに塩漬けした桜の葉が入っていて、ニッコリしたくなる美味しさ。

日が昇る時間が5時過ぎになってきたので、このところ朝の散歩は5時丁度ぐらいに家を出ることが多い。玄関の引き戸を開けるとここ数日にしては暑いと感じるムッとした空気があった。
暑さがあっても、空はもう真夏とは違う秋の様相。

夏の暑さで、くるみ(ミニチュア・シュナウザー4歳)が食欲をなくしたことをきっかけに、ドッグフードにプラスして、茹でた鳥のササミを混ぜて与えている。
夫が作っておいた鳥のササミは、冷凍しておらず且つまとめて作りすぎたようで、冷蔵庫に入れておいても今朝には駄目になっていた。
しょうがないので、くるみのオヤツ用に蒸しておいたサツマイモを細切れにしてドッグフードに混ぜる。
「これじゃないんだけど…」と上目使いでこちらを見ながらもガツガツとすごい勢いで食べていた。

朝の早い時間から昼までオンラインのミーティング。
途中で夫が帰宅。
このところ、夫は週末含め休みらしい休みがないけれど、仕事が楽しいようなので何より。

ダラダラと読んでいた楠木建氏の「戦略読書日記<本質を抉りだす思考のセンス>」を読了。
めちゃくちゃ面白く、ここに取り上げられた本は全部読みたくなるのだが、視野が狭くなるのでできるだけビジネス書は読まない‥と心がけているので、本当に悩ましい。

最後のロングインタビューでは、趣味は仕事と読書ぐらいしかない‥という話や、日記を読むのがやたらに好きだったりと共通項も多いことに気づく。
彼の推薦する本を読んで外れたことがないというのもあり、ビジネス書ではあるが、ついつい読んでしまうのがこの人の本。

楠木 僕は脳への負荷別に重量・中量・軽量というふうに本を分けて、三冊ぐらいを並行して読むようにしています。たとえば僕の好きな日記モノでいえば、重量級は『ウィトゲンシュタイン哲学宗教日記』、中量級だと『ホーチミン・ルート従軍記』、軽量級だと『池波正太郎の銀座日記』みたいな取り合わせですね。高負荷の『ウィトゲンシュタイン哲学宗教日記』を三時間読んでいるとアタマが疲れるんですよ。素晴らしく面白いんですけど、いろいろと考えることがあってアタマが疲れる。で、息抜きに『ホーチミン・ルート従軍記』を読む。で、いよいよ疲れると池波先生の出番になる。池波風に言うと、(これがもうたまらない……)。

──それが本を読みながら本を読むという。

楠木 読書に疲れると読書をする。で、さらに疲れるとまた読書。で、疲れが取れるとまた読書。

──傍から見るとずっと本を読んでいるだけですけど。

楠木 僕の中でちゃんと脳への負荷のバランスを取っているんです。これをやらないと一〇時間連続で読み続けるのは難しいですよ。

楠木 建. 戦略読書日記<本質を抉りだす思考のセンス> (Japanese Edition) (pp.449-450). Kindle 版.

午後の打ち合わせが1時間繰り上がって終了。

溜まっているアイロンがけを片付ける。
阿波しじらの着物を自宅で洗ったところまでは良いけれど、そのアイロンがけが結構大変。
和服は平面だからアイロンがけにテクニックがいることはないけれど、面積がとにかく広い。


夕方の犬の散歩。
いつもの海の家で、空が夕焼けから夜に変わっていくのを眺めながら家族で生ビール。
逗子に暮らすようになってから、一度も家族で泊りがけで出かけていない‥と夫が言い出す。そもそも旅行好きではない私には何も気にならないが、夫としてはたまには出掛けたいようだ。
少なくともこの海の家の時期は、ここでこんな風な時間の過ごし方を堪能したいので、これが終わってから検討しましょうと流しておく。
緑も山もあるので、都内にいたときよりさらに旅行に行きたい感が私の中で減っているのと、そもそもくるみは家でいつも通り過ごすほうが幸せだろう‥と思うので、ますます重い腰が上がらない。

このところ、泊りがけの仕事の多い夫曰く、泊まりの仕事は嬉しくないけれど、二人とも在宅で仕事をして、24時間一緒にいるよりも、新鮮味があって仲が良くなるかもしれない‥とのこと。
十分過ぎるほど仲が良いと思っている私としては、驚いて「うち、仲良くないの?」と聞くと、「いや、そんなことないけど、より仲良くってこと‥」と慌てて否定していた。

このところの仕事の忙しさとそのプレッシャーを考えると、私が夫の立場だったら、仕事だけで頭いっぱいになって仕事以外の時間も楽しめないし、誰かと一緒でも仕事のことばかり考えてしまうけれど、私からみると余裕があるのは体力とこれまでもくぐり抜けてきたプレッシャーを跳ね返す経験なのか、精神的キャパが広いのか、楽観的なのか、本当にすごいし、羨ましいなと素直に思う。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

  1. 2021.04.04

    ノイズ
  2. 2020.07.28

    読書と鉛筆

コメント

コメントをお待ちしております

HTMLタグはご利用いただけません。